それはまだ私が実家で暮らしていた頃の事。
ある日、加入している生命保険会社から私宛てに郵便が届いた。
開封すると、中から「中村あい様」という自分の筆跡で宛名を
書かれた封筒が出てきた。
それを見て、思い出した。
それより10年前、生命保険会社が募集していた「10年後の自分
へ」という手紙を書いて預けて、10年後に自分の元に届くとい
う企画に参加したのだった。
しかし、それは思い出したものの、手紙の内容は全く少しも覚え
ていない。
少しドキドキしながらその封筒を開いて中の便箋を取り出した。
そこには、たった一言
「今の自分が好きですか?」と書いてあった。
それを読んで、それを書いた頃の事、それからの10年の間の色々
を振り返った。
若い頃の私は劣等感が強く、自分の嫌な所ばかりが気になって、
どうにも自己嫌悪から抜け出せずにいた。
その後、イラストを勉強するべく上京したものの、うつになり
故郷に帰り、その後何年も治療を続けた。先が見えなかった。
しかし、諦めず治療を受け続け、またどんな状態でも寄り添っ
てくれる友人たちとの交流もあり、一進一退しつつも病状は快
方に向かい、やがて寛解した。
苦しみから解放される過程で、私は自分が思うほど自分はダメな
人間ではないと気付き、あるがままの自分の価値を認められるよ
うになっていったのだった。
私は手紙を読んで、何とも胸がいっぱいになるのを感じた。
「今の自分が好きですか?」
答えはもちろん...